2002年、90歳超の医師 日野原重明氏による「生きかた上手」というエッセイ本が、100万部を超えるベストセラーとなりました。
著者のコアなファンである高齢者を主な購買層としていたこの本が広く注目を集めるようになったきっかけは、16歳の少年から届いた愛読者カードを使った中吊り広告です。 「長生きしたくないと思っている若者のひとりですが、少しだけ長生きしてみたくなりました」 そして、NHKの「クローズアップ現代」で、90歳超の老人によるこの本に心を動かされた若者たちが取り上げられ、販売は急加速し、ベストセラー1位となる月が続きました。 しかし、実は購買層の年齢構成比に変化はありませんでした。次の世代に少しでも役立ちたいという希望を持つ無数の高齢者が、この本を手に取ったのでした。 そんな希望を感じとった出版界は、次々と高齢作家のエッセイを出版し始めました。今に続く、老人本ブームのはじまりです。 |