棒を振る名人は何を語ってきたかということで、宮本武蔵が『五輪書』で記している、太刀の持ち方、そして振り方です。
簡素で味わいある原文をそのまま引用します。〈『武蔵の五輪書を読む』(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」)より〉 一 太刀の持様の事。 刀のとりやうハ、大指、ひとさし(指)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。 太刀をもつと云て、持たるばかりにてハ悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。 ためし物など切ときの手のうちも、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。 惣而、太刀にても手にても、いつくと云事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いくる手也。能々心得べきもの也。 一 太刀の道と云事。 太刀の道を知ると云ハ、常に我さす刀を、指二つにて振る時も、道筋よくしりてハ、自由に振もの也。太刀をはやくふらんとするによつて、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或は扇、或は小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫ハ、小刀きざみといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどりよき道へもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振る事、是太刀の道也。 我が兵法の五つの表をつかひ覚ゆれバ、太刀の道定て振よき所也。能々鍛錬すべし。 太刀という固く重い物体が、手で接続され身体の延長となったときに、どのように接続しどのように動かせば、太刀の能力を最大限に発揮できるかですが、ゴルフで言われていることとかなり重なるように思います。 ゴルフスイングに当てはめられたオノマトペとしては「チャー・シュー・麺」が有名ですが、ジョニー・ミラーが「ジョニー・ミラー」と言いなさいと指導していたという伝説?が個人的には大好きです。
先ほど、ふと思い出したのが、中原中也が作りだしたオノマトペです。 サーカスのブランコのシーン。さすが詩人と唸るオノマトペ「ゆあーん ゆよーん」は、スイングに当てはめても、タメと加速が感じられて、とても良いのではないかと・・・。 サーカス 幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました 幾時代かがありまして 冬は疾風(しっぷう)吹きました 幾時代かがありまして 今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り 今夜此処での一と殷盛り サーカス小屋は高い梁(はり) そこに一つのブランコだ 見えるともないブランコだ 頭倒(あたまさか)さに手を垂れて 汚れ木綿(もめん)の屋蓋(やね)のもと ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん それの近くの白い灯(ひ)が 安値(やす)いリボンと息を吐(は)き 観客様はみな鰯(いわし) 咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん 屋外(やがい)は真ッ闇(くら) 闇の闇 夜は劫々と更けまする 落下傘奴(らっかがさめ)のノスタルジアと ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん 湯原信光プロが、オノマトペと運動イメージや運動能力との関係について熱く語っています。 日本語のオノマトペが異常なほどに豊富であることはよく知られていますが、「スポーツオノマトペ」研究の第一人者、藤野良孝さんのインタビュー記事の前編と後編です(「スポーツオノマトペ」という研究分野があることを今まで知りませんでした)。 また、こちらから「スポーツオノマトペ」に関する様々な論文を読むことができます。 0003】で紹介したビデオで指導していた北野ティーチングプロが登場する2017年の日経の記事を読みますと、「ゴルフオノマトペ」探求が広く行われる気配ムンムンなのですが、現在そのような感じではないのは、なぜでしょうか? ネットに日英オノマトペ辞典がありました。英語のオノマトペの数をドバドバ凌駕していることがわかります。というか、日本語話す皆さんは日々無意識に苦労することもなくポコポコと産み続けているような気がします。
キレキレな特殊イメージ能力を持っているわけですから、ゴルフにサラリと活かせるといいですね。 呼吸はスポーツに限らず、全身がタイミングよくスムーズに動くかどうかだけでなく気落ちも大きく左右する、最もファンダメンタルな要素のひとつですし、吸う時吐く時、吸い方吐き方は、意識して制御できますので、呼吸法を学ぶことに非常に大きなメリットがあると思いましたので、関連情報を収集してみました。 ゴルフだけでなく、他のスポーツでも案外大きなテーマになっていないようで、まだ十分なデータの蓄積もなく、時々気になった人がいろいろなアプローチで実験や試行錯誤をしているというのが、またいい感じです。 下は、野球のスイングを呼吸を変えて実験したものです。 それで、再びゴルフです。呼吸法としては番外編という感じですが、面白いです。自分のスイング制御にピッタリなオノマトペを発声するというのは、その面白さもあって、自分の身体というブラックボックスの扱い方として一番効率的な感じがしないでもありません。 呼吸とイメージコントロールの連動は、科学的にも深い場所を突いていると思います。北野ティーチングプロが、飄々と指導するので、まがい物と思ってしまう人が多いかも知れませんが・・・。 ここ数年間、ゴルフ関連のYouTubeをついついたくさん観て、いろんな教えを自分なりに吸収しようとしてきましたが、心の奥になんか落ち着かないものが育ってくるのでした。 そして先日、下のビデオの、クラブの動き(と加速)について、クリス・ライアンコーチの説明を聞いていて、ちょっと落ち着きました。(YouTubeの自動翻訳機能を使うと、日本語字幕が出てきます) どう見ても、クラブの動きと力のかかり方は振り子などよりはるかに複雑です。さらに、それに関わる身体の動きは遥かに複雑怪奇なはずです。ということは、正確な認知も分析もそして制御も無理という現実から、さてどうするかを考えた方が良さそうです。とわかると、少しすっきりしました(ビデオが意図していない鑑賞の仕方をしているとは思いますが・・・)。
それから、自分でも、時々ボールにちゃんと当たるということが、かなり素晴らしいことに思えてきました(笑)。 この日、山や谷の中に消えたボールは3つか4つでした。
はじまりとしてちょうど良い数字になりました。 コースには月に1回くらいしか行けないノンアスリート高齢者にできることを、発想のところは頑張って、楽しく行いたいと思います。 |